◎経過観察問題(その3):福島県は、《福島県に県民健康調査の甲状腺検査で「経過観察」となった2523人の子どものうち「悪性ないし悪性疑い」が発見された症例数を明らかにする義務もなければ、症例数を把握する鈴木眞一教授らの研究プロジェクトとも関わりはない》と答弁(2018年1月22日子ども脱被ばく裁判) ->こちら◎関連記事「184人以外にも未公表の甲状腺がん〜事故当時4歳も」(Ourplanet-TV 2017.3.20)
「存在していた!福島医科大『甲状腺がんデータベース』」(Ourplanet-TV 2017.8.30)
福島県は、《求釈明の対象を福島県立医大付属病院における症例に限定した場合であっても、被告福島県において本訴訟における求釈明に対する対応として調査し、明らかにする余地はない。》と答弁(2017年10月18日子ども脱被ばく裁判)
1、今年3月末、NPO法人「3・11甲状腺がん子ども基金」の会見(→会見動画)で、福島県は県民健康調査の甲状腺検査の二次検査(※)で「経過観察」とされた子ども(単純合計で)2523人は、その後「悪性ないし悪性疑い」が発見されても、その数を公表していなかった事実、つまり福島県が公表した190人(今年3月末時点)の患者以外にも未公表の患者がいることが明らかになり、本年5月24日、「子ども脱被ばく裁判」で、この問題を取り上げ、被告福島県が未公表の数を明らかにするよう求める書面を提出しました。->こちら
(※)二次検査:超音波による一次検査でのう胞 20.1mm以上/結節 5.1mm以上の判定だった子どもを対象に行なう、詳細な超音波検査、血液検査などの精密検査(福島県による甲状腺検査の仕組み->こちらを参照)。
2、この開示の要求に対し、本年8月8日の裁判で、被告福島県は、
『経過観察』中に『悪性ないし悪性疑い』が発見された症例の数は把握していない。
と回答してきました。被告福島県の回答の書面は->こちら
3、この福島県の回答に対し、8月8日の裁判に先立って開かれた事前協議の場で、原告代理人(柳原)から、
症例の数の把握について、被告福島県はこれを把握する義務があると考えているのか?
と尋ねたところ、被告福島県の代理人は、
把握する義務はないと考えている。
と回答した。
ところが、そのすぐあとの公開法廷の弁論の場で、原告代理人が再び同じ質問をすると、今度は被告福島県の代理人は、先ほどの回答とは異なり、
把握する義務とは何を根拠とするのか明らかにしてほしい。その上で回答する。
と回答を留保してきました。
4、この福島県の回答保留の返信に対し、本年10月18日の裁判で、原告より、被告福島県に「症例の数を把握する義務がある」、その根拠を明らかにする書面を提出しました。
その準備の過程で、福島県(正確には福島県立医大)は既に、県民健康調査の甲状腺検査に基づいて、「悪性ないし悪性疑い」が発見された症例のデータベースを作成し、上記の未公表の症例のデータも保存・管理していることを明らかにした報告(白石草さんの「見えない『小児甲状腺がん研究』の実態に迫る」)が、雑誌「科学」本年9月号に掲載されたことを知り、この症例データベースの存在を前提にして、未公表の症例数の公表を被告福島県に求める主張を全面に取り上げました。
以下が、その主張を裁判で陳述した要旨と裁判所に提出した書面です。
なお、上記報告書のベースとなった福島県立医大の2つの研究計画書と研究成果報告書
->研究計画書①「小児甲状腺がんの分子生物学的特性の解明」
研究計画書②「若年者甲状腺がん発症関連遺伝子群の同定と発症機序の解明」
研究成果報告書「小児甲状腺がんの分子生物学的特性の解明」
5、この原告の提出書面に対し、10月18日の裁判で、被告福島県から、
被告福島県と福島県立医大は別法人なのに、原告の準備書面43は両者の関係が明確でない。
と指摘が出なされたので、原告は1ヶ月以内に、この点を明確にすることを約束。
要するに、
福島県立医大内でやられていること(症例データベースや組織バンクの作成など)で、どうして別法人の福島県が責任追及されなければならないのか、その理由を明らかにしろ、という質問です。6、一方、被告福島県は、前回8月の裁判で、原告代理人(井戸)が、
甲状腺検査で「経過観察」となった子どものうち、他の病院はともかく、せめて福島県立医大付属病院で「悪性ないし悪性疑い」が発見された数だけでも明らかにして欲しい、
と釈明したのに対し、
《求釈明の対象を福島県立医大付属病院における症例に限定した場合であっても、被告福島県において本訴訟における求釈明に対する対応として調査し、明らかにする余地はない。》(3頁第5)
と末尾の回答書(準備書面(11)3頁。黄色の線で表示)を提出。
これに対し、当日の裁判で、原告代理人(井戸)より、この回答の意味が分からない、説明してほしいと求めたところ、 被告福島県の代理人はその問いには答えず、
原告から、福島県と福島県立医大の関係についての主張が出たら、この点も次回までに回答する。
と答えるのみでした。これは、自ら主張しておきながら、その意味を質問されたら、「原告の回答を聞いてから答える」というもので、その無責任な対応には呆れ返るほかない。
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陳述した要旨:原告準備書面(43)――いわゆる経過観問題(続き)について――
本書面は、前々回の裁判で提出した「いわゆる経過観察問題について」の原告準備書面に対し、前回の裁判に、被告福島県から提出された反論書面等に対して、今回、原告からさらに再反論し、再度求釈明を求めたものである。
第1、「悪性ないし悪性疑い」の症例に対する被告福島県の把握の現状について
雑誌「科学」の本年9月号に掲載の白石草氏の「見えない『小児甲状腺がん研究』の実態に迫る」の論文は、2013年12月頃から、福島県立医大の鈴木眞一教授を研究責任者として、山下俊一長崎大学副学長率いる長崎大学と連携しながら、福島県内の18歳以下の小児甲状腺がん患者の症例データベースを構築し、この小児甲状腺がん患者の手術サンプルとそのサンプルから抽出したゲノムDNA、cDNAを長期にわたって保管・管理する「組織バンク」を整備する研究プロジェクトがスタートしたことを2つの研究計画書と研究成果報告書等に基づき明らかにしたものであり、本書面はこの論文で明らかにされた「悪性ないし悪性疑い」の症例に対する被告福島県の把握の現状について述べるものである。
1、本研究プロジェクトの社会的使命
研究計画書は、この研究プロジェクトの社会的使命についてこう述べる。
我々が福島県内で発生した小児甲状腺癌の DATA 集積を行い、その分子生物学的特性を明らかにすることは、低線量被ばくの健康への影響の有無を知る上で、きわめて重要な知見となる。こうした患児の長期的な経過観察を行ない、その手術サンプルから、得られる ゲノム DNA等を一元的に保管・管理するシステムの構築し、情報を発信することは我々の社会的な使命と考えている
2、本研究プロジェクトの目的
その上で、研究計画書はこの研究プロジェクトの2つの目的を次の通り掲げる。
第1は、小児甲状腺腫瘍の組織バンクを構築すること。第2は、小児甲状腺超音波検診で発見される甲状腺癌の分子生物学的特性を明らかにすること。
3、本組織バンクの対象者の選定
以上の、福島県内で発生した小児甲状腺癌の DATA 集積のために、手術サンプルから得られるゲノム DNA等を一元的に保管・管理するシステムを構築するため、研究計画書は、この組織バンクの対象となる対象者は、第1に福島県立医大に限らず、第2に他の協力施設で手術を行なった甲状腺癌患者のうち同意を得られたものとし、第3に、さらに、もし従来の協力施設以外の施設で甲状腺癌患者の手術が行なわれる場合には、その施設も新たな協力施設として追加申請して当該患者も対象者に含むこととして、福島県立医大が可能な限り、福島県内で発生した全ての小児甲状腺癌のDATA 集積を行なう体制を作ることを明らかにした。
4、一元的に管理する症例データベースの構築
福島県立医大により、この組織バンクの一元的な管理システムを実現することは、言うまでもなく、18歳以下の甲状腺癌患者の症例データベースも福島県立医大により一元的な管理システムとして構築することを意味する。これが事実であることは、研究成果報告書が《瘍径、年齢、リンパ節転移の有無、病理組織学的所見などの情報を一元的に管理するデータベースを構築した。》(4枚目左段9~15行目)と明らかにしている。
従って、福島県立医大は、福島県内で発生した18歳以下の甲状腺癌患者の情報を一元的に管理する本症例データベースを構築しており、それゆえ、福島県は、福島県内で発生した18歳以下の甲状腺癌の「悪性ないし悪性疑い」の症例について、福島県立医大のみならず協力施設または協力施設以外の施設で手術した甲状腺癌患者の情報も把握しており、その際、「二次検査では経過観察となり、診療中で甲状腺がんが診断された」場合は除くといった例外を設けておらず、「経過観察」中に「悪性ないし悪性疑い」が発見された症例の数も把握しており、言うまでもなく、これらの《情報を発信することは、研究計画書で宣言した通り、福島県立医大の無条件の社会的な使命である。
以上より、前回期日における、《被告福島県は、「『経過観察』中に『悪性ないし悪性疑い』が発見された症例の数は把握していない。》という被告福島県の主張は撤回すべきである。
第2、症例数を把握する被告福島県の義務について
被告福島県は、『経過観察』中に『悪性ないし悪性疑い』が発見された症例数を把握する義務を負うかという論点について、原告は被告福島県には上記症例数を把握する義務があると考える。
これは、いわゆる不作為による不法行為における作為義務発生の実質的根拠を明らかにすることにより導かれる。この問題を正面から論じた論文が橋本佳幸京大教授「責任法の多元的構造」であり、それによれば、作為義務発生の実質的な理由は次の2点にある。
1、支配領域の基準
これは例えば、保育所で保育中の乳児が体調不良を起した時、保育所の保育士等の監護者は、自己の支配領域内に存する乳児の身体の侵害に関して、必要な救護・救助措置を講じてこれを阻止する作為義務が発生する場合である。
福島県の子どもを対象とした甲状腺検査は、甲状腺癌の症例数など低線量被ばくの健康への影響の有無を判断する上できわめて重要な情報を提供するものである。この情報は甲状腺検査を主催する被告福島県が保有しており被告福島県の支配領域内にあるため、第三者の国、他の自治体、民間の医療機関が被告福島県に代わって、この情報を提供し放射能から福島県の子どもらの健康を守ることは不可能である。言うまでもなく、福島県の子どもらとその保護者も自ら、この情報を取得し放射能から子どもらの健康を守ることも不可能である。
従って、第三者や福島県の子どもらに代わって福島県の子どもらの健康を確保するように要請されるのは甲状腺検査を主催し、情報を管理支配する被告福島県である。すなわち被告福島県は放射能により福島県の子どもらの健康が侵害されないように、自己の事実的支配を行使して甲状腺癌の症例数などの情報を福島県の子どもらと保護者に提供すべき作為義務を負うものである。
2、先行行為の基準
これは例えばそれ自体として危険な物・場所が原因となって他者の身体を侵害する危険性のある事故が発生した場合、当該物・場所の管理者は必要な管理措置(とりわけ監視・隔離措置)を講じて身体への侵害を阻止する作為義務が発生する場合である。
2、先行行為の基準
これは例えばそれ自体として危険な物・場所が原因となって他者の身体を侵害する危険性のある事故が発生した場合、当該物・場所の管理者は必要な管理措置(とりわけ監視・隔離措置)を講じて身体への侵害を阻止する作為義務が発生する場合である。
本来、県民健康調査を行なう第一の責任は国にある。なぜなら、国は原子力発電所建設を国策として率先して推進してきた者である以上、福島原発事故の発生に対して被災地住民の保護を引き受ける責任があり、それゆえ、国はこの自己の先行行為に対する責任として、被災地の住民の健康被害に対しても《原因の明らかでない公衆衛生上重大な危害が生じ、又は生じるおそれがある緊急の事態に対処すること》(厚生労働省設置法4条1項4号)を職務とする厚生労働省が実施主体となって県民健康調査を行なうという作為義務があるのは当然であり、さらに、県民健康調査の中で判明した情報を福島県の子どもらと保護者に提供すべき作為義務を負うのも当然である。
それゆえ、現在、被告福島県が実施中の県民健康調査は、福島県内で発生した原発事故に対して「住民の福祉の増進を図る」(地方自治法1条の2第1項)ことを存立の基本とし、なおかつ福島第一原子力発電所の建設に同意した福島県がその責任を果すために実施しているものであるが、同時に、この県民健康調査は、先行行為に基づき県民健康調査を行なう作為義務を負う国からの委託に基づいて被告福島県により実施されているという性格も併せ持つものである。
そうだとすれば、被告福島県は、福島県の子どもらと保護者に提供すべき作為義務を負う国からの委託に基づいて、県民健康調査の中で判明した甲状腺癌の症例数などの情報を提供すべき作為義務を果す必要があるのは当然である。この義務はまた、福島原発事故に対して法律的にも、また大人と異なり道義的にも一点の責任もない福島県の子どもたちが、原発事故発生に対して、己の生命、身体が侵害されないように、侵害防止に必要な情報を原発事故発生をもたらした者たち(東京電力株式会社、国、福島県など)に対し提供を求める権利、すなわち知る権利を有していることに対応する当然の責務である。
以上より、被告福島県に、「経過観察」となった2523人の子どものうち「悪性ないし悪性疑い」が発見された症例数を把握する義務があることが明らかであり、すみやかにこの義務を果すべきである。
それゆえ、現在、被告福島県が実施中の県民健康調査は、福島県内で発生した原発事故に対して「住民の福祉の増進を図る」(地方自治法1条の2第1項)ことを存立の基本とし、なおかつ福島第一原子力発電所の建設に同意した福島県がその責任を果すために実施しているものであるが、同時に、この県民健康調査は、先行行為に基づき県民健康調査を行なう作為義務を負う国からの委託に基づいて被告福島県により実施されているという性格も併せ持つものである。
そうだとすれば、被告福島県は、福島県の子どもらと保護者に提供すべき作為義務を負う国からの委託に基づいて、県民健康調査の中で判明した甲状腺癌の症例数などの情報を提供すべき作為義務を果す必要があるのは当然である。この義務はまた、福島原発事故に対して法律的にも、また大人と異なり道義的にも一点の責任もない福島県の子どもたちが、原発事故発生に対して、己の生命、身体が侵害されないように、侵害防止に必要な情報を原発事故発生をもたらした者たち(東京電力株式会社、国、福島県など)に対し提供を求める権利、すなわち知る権利を有していることに対応する当然の責務である。
以上より、被告福島県に、「経過観察」となった2523人の子どものうち「悪性ないし悪性疑い」が発見された症例数を把握する義務があることが明らかであり、すみやかにこの義務を果すべきである。
以 上
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平成26年(行ウ)第8号ほか
原告 原告1-1ほか
被告 国ほか
準備書面(43)
――いわゆる経過観察問題(続き)について――
2017年10月 6日
福島地方裁判所民事部 御中
原告ら訴訟代理人 柳 原 敏 夫
ほか18名
本書面は、原告準備書面(33)――いわゆる経過観察問題について――に対する被告福島県の回答である準備書面(10)及び前回期日のやり取りを踏まえた原告主張及び再度の求釈明である。
目 次
本年9月1日発売の雑誌「科学」9月号掲載の白石草「見えない『小児甲状腺がん研究』の実態に迫る」(甲C72。以下、本論考という)は、被告福島県の甲状腺検査がスタートして2年経過した2013年12月頃から、福島県立医大甲状腺内分泌学講座の主任教授鈴木眞一を研究責任者として、山下俊一長崎大学副学長率いる長崎大学と連携しながら、福島県内の18歳以下の小児甲状腺がん患者の症例データベースを構築し、同がん患者の手術サンプル及び同サンプルから抽出したゲノムDNA、cDNAを長期にわたって保管・管理する「組織バンク」を整備する研究プロジェクト(以下、本研究プロジェクトという)がスタートしたことを本研究プロジェクトを記載した2つの研究計画書[1](甲C73~74)や研究成果報告書[2](甲C75)等に基づき、明らかにした。
以下、本論考で明らかにされた「悪性ないし悪性疑い」の症例に対する被告福島県の把握の現状について述べる。
2、本研究プロジェクトの社会的使命、目的及び対象者の選定
(1)、本研究プロジェクトの社会的使命
研究計画書(甲C73の2。以下、本研究計画書という)によると、本研究プロジェクトの社会的使命について次のように述べている。
《我々が福島県内で発生した小児甲状腺癌の
DATA 集積を行い、その分子生物学的特性を明らかにすることは、低線量被ばくの健康への影響の有無を知る上で、きわめて重要な知見となる。こうした患児の長期的な経過観察を行ない、その手術サンプルから、得られる genomic DNA および cDNA 等を一元的に保管・管理するシステムの構築し、情報を発信することは我々の社会的な使命と考えている》(5頁「7 研究の背景及び目的」18~22行目)。
(2)、本研究プロジェクトの目的
その上で、本研究計画書は本研究プロジェクトの2つの目的を次の通り掲げる。
《本研究では、小児甲状腺腫瘍の組織バンクを構築する。小児甲状腺超音波検診で発見される甲状腺癌の分子生物学的特性を明らかにすることを目的とする。》(同上23~24行目)
この2つの目的について、研究成果報告書(甲C75。以下、本研究成果報告書という)では、次のように報告されている。
《本研究では、①小児甲状腺腫瘍の組織バンクを構築する。小児甲状腺超音波健診で発見される甲状腺癌の分子生物学的特性を明らかにすることを目的とする。
①手術標本の管理保存体制の確立
甲状腺超音波健診を中心とした、福島県内の小児に対する健康管理調査は、長期にわたって継続されるものである。したがって、今後、発見される可能性のある小児甲状腺癌の手術標本から、genomic DNA, cDNA, 新鮮凍結標本を保管・管理することは、必要不可欠である。
②遺伝子変異の解析
(以下、略)‥‥ 》(2枚目右段下から9行目~3枚目右段1行目)
以上の記述から明らかなことは、未曾有の原発事故による未曾有の健康被害の発生という重要課題に直面して、福島県立医大の鈴木眞一教授らは《我々が福島県内で発生した小児甲状腺癌の DATA 集積を行い、その分子生物学的特性を明らかにすることは、低線量被ばくの健康への影響の有無を知る上で、きわめて重要な知見となる》という自覚に立ち、そのDATA 集積のためには《手術サンプルから、得られる genomic DNA および cDNA 等を一元的に保管・管理するシステムを構築し、情報を発信することは我々の社会的な使命と考えている》(下線は原告代理人)と、福島県立医大が一元的に保管・管理する「組織バンク」(以下、本組織バンクという)を構築すると明確に述べている点である。
(3)、本組織バンクの対象者の選定
以上の目的に沿って、本研究計画書は、本組織バンクの対象となる「対象者の選定」について、次のように言う。
《研究期間内に当施設および協力施設に受診・入院した手術適応となる18歳以下の甲状腺癌患者のうち、研究参加の同意が得られたもの。‥‥協力病院については、対象者が発生した際に、計画変更申請にて、別個に追加する。》(下線は原告代理人。5頁「8 対象者の選定」25~29行目)
すなわち、福島県内で発生した小児甲状腺癌の
DATA 集積のためには福島県立医大が一元的に保管・管理するシステムを構築する必要があり、この一元的な管理システムを実現するために、本組織バンクの対象となる対象者は、当施設すなわち福島県立医大に限らず協力施設で手術を行なった甲状腺癌患者のうち同意を得られたものとし、さらに、もし従来の協力施設以外の施設で甲状腺癌患者の手術が行なわれる場合には、当該施設を新たな協力施設として追加申請して当該患者も対象者に含むこととして、福島県立医大が可能な限り、福島県内で発生した全ての小児甲状腺癌のDATA 集積を行なう体制を作ることとした。
(4)、一元的に管理する症例データベースの構築
福島県立医大による本組織バンクの一元的な管理システムの実現は、言うまでもなく、18歳以下の甲状腺癌患者の症例データベースも福島県立医大により一元的な管理システムとして構築することを意味する。この点、本研究成果報告書は次のように明らかにしている。
《4.研究成果
①症例データベースの構築
2016 年 3 月 31 日現在、福島県立医科大学附属病院で手術を施行した症例は、128 例であった。腫瘍径、年齢、リンパ節転移の有無、病理組織学的所見などの情報を一元的に管理するデータベースを構築した。》(下線は原告代理人。以下、福島県立医大が一元的に管理する症例データベースを本症例データベースという。4枚目左段9~15行目)
従って、本症例データベースに登録された全ての「悪性ないし悪性疑い」の症例数を公表することは、福島県立医大にとって言うまでもなく《情報を発信することは我々の社会的な使命》(甲C73本研究計画書5頁「7 研究の背景及び目的」21~22行目)の一環である。
ここで注意すべきことは次の2つである。
1点目は、本症例データベースは、本組織バンクと異なり、《甲状腺癌患者のうち、研究参加の同意が得られたもの》という限定が付されていないことである。すわなち、本研究参加の同意の有無に関わらず、福島県内で発生した18歳以下の甲状腺癌患者は全てデータベース登録の対象とされる。従って、前記(3)で述べた通り、本組織バンクの対象者の選定は福島県立医大に限らず協力施設または協力施設以外の施設で手術した甲状腺癌患者全てを対象としたものであるから、これらの者の症例情報が全て本症例データベースに登録されることとなる。その際、甲状腺癌患者の同意なしに彼らの症例情報を本症例データベースに登録できるかという問題が発生するが、この問題は改めて論ずるとして、前記(1)に掲げた社会的使命を達成するためには、すなわち原発事故による健康被害の影響の有無を長期間にわたり注意深く検討していくためには、チェルノブイリ原発事故後に、ウクライナ、ベラルーシ、ロシア周辺3国で、原発事故の被災者のデータを全て登録し、一元的に管理するデータベースが作られてきたように[3]、福島原発事故においても一元的に管理された本症例データベースの構築は必要不可欠である。
2点目は、一元的に管理する症例データベースの構築にあたって、「二次検査では経過観察となり、診療中で甲状腺がんが診断された」場合の症例は除くといった例外を設けていないことである。福島県立医大のスタンスは、上記の通り、もし従来の協力施設以外の施設で甲状腺癌患者の手術が行なわれることが判明した場合には、当該施設を新たな協力施設として追加申請して当該患者を対象者に加えるというもので、一元的に管理する本症例データベースの構築をめざす以上、当然のことである。
3、小括
以上の通り、福島県立医大は、福島県内で発生した18歳以下の甲状腺癌患者の情報を一元的に管理する本症例データベースを構築しており、従って、福島県は、福島県内で発生した18歳以下の甲状腺癌の「悪性ないし悪性疑い」の症例について、福島県立医大のみならず協力施設または協力施設以外の施設で手術した甲状腺癌患者の情報も把握しており、その際、「二次検査では経過観察となり、診療中で甲状腺がんが診断された」場合は除くといった例外を設けておらず、「経過観察」中に「悪性ないし悪性疑い」が発見された症例の数も把握しており、言うまでもなく、これらの《情報を発信することは我々の社会的な使命》(本研究計画書5頁「7 研究の背景及び目的」21~22行目)である。
以上から明らかな通り、被告福島県の準備書面(10)の《被告福島県は、「『経過観察』中に『悪性ないし悪性疑い』が発見された症例の数は把握していない。》という主張は撤回すべきである。
第2、症例数を把握する義務の有無について
1、はじめに
前回期日において、原告から被告福島県に対して「被告福島県は、『経過観察』中に『悪性ないし悪性疑い』が発見された症例数を把握する義務を負うのか」と問うたのに対して、(進行協議期日において、いったん「そのような義務はない」と答弁したものの、すぐあとの)口頭弁論期日において、「いかなる意味で義務を負うということなのか、明らかにされたい」と回答を保留した。
よって、原告より、以下の通り、被告福島県には上記症例数を把握する義務があることを明らかにする。
2、本件は規制権限の不行使の事例ではないこと
まず、被告福島県が「経過観察」中に「悪性ないし悪性疑い」が発見された症例数を把握しないことは国家賠償法1条または民法709条の適用事例に該当する可能性がある。なぜなら、当該症例数を把握し、速やかに公表することにより、低線量被ばくの健康への影響に対する重要な知見を県民に提供し、無用な被ばくを避けて健康被害の悪化の防止という救済が可能になるのにそれを放置し、県民に健康被害の悪化という危害を加えたとされる可能性があるからである。
とは言っても、本件はいわゆる公権力の「規制権限の不行使」の事例とは異なる。なぜなら、「規制権限の不行使」の事例とは例えば電力会社といった民間による被害発生の防止のため国家に対し規制が求められる場合に、その規制権限の不作為を理由とする国家賠償事件であるのに対し、本件はそのような民間による被害発生は存在せず、もっぱら公権力による被害発生だけが問題になるからである。従って、本件において裁量論や「権限の不行使が著しく不合理」といった議論は問題にならない。
まず、被告福島県が「経過観察」中に「悪性ないし悪性疑い」が発見された症例数を把握しないことは国家賠償法1条または民法709条の適用事例に該当する可能性がある。なぜなら、当該症例数を把握し、速やかに公表することにより、低線量被ばくの健康への影響に対する重要な知見を県民に提供し、無用な被ばくを避けて健康被害の悪化の防止という救済が可能になるのにそれを放置し、県民に健康被害の悪化という危害を加えたとされる可能性があるからである。
とは言っても、本件はいわゆる公権力の「規制権限の不行使」の事例とは異なる。なぜなら、「規制権限の不行使」の事例とは例えば電力会社といった民間による被害発生の防止のため国家に対し規制が求められる場合に、その規制権限の不作為を理由とする国家賠償事件であるのに対し、本件はそのような民間による被害発生は存在せず、もっぱら公権力による被害発生だけが問題になるからである。従って、本件において裁量論や「権限の不行使が著しく不合理」といった議論は問題にならない。
3、民法の不作為不法行為の基本構造
次に、国家賠償法の位置づけについて、民法不法行為法の特則という見解と民法不法行為法とは別の損害賠償制度という見解があるが、いずれの見解でも「国家賠償制度と民法不法行為法の制度とはその基本構造において類似する」と考える点で共通する。従って、以下では、民法の不作為不法行為の基本構造を手がかりにして、本件の不作為の基本構造を分析する。その際、分析の手引きとした論文が、不作為不法行為の基本構造に正面から本格的に取り組んだ橋本佳幸京大教授「責任法の多元的構造―不作為不法行為・危険責任をめぐって―」(2006年。以下、橋本論文という)である。
次に、国家賠償法の位置づけについて、民法不法行為法の特則という見解と民法不法行為法とは別の損害賠償制度という見解があるが、いずれの見解でも「国家賠償制度と民法不法行為法の制度とはその基本構造において類似する」と考える点で共通する。従って、以下では、民法の不作為不法行為の基本構造を手がかりにして、本件の不作為の基本構造を分析する。その際、分析の手引きとした論文が、不作為不法行為の基本構造に正面から本格的に取り組んだ橋本佳幸京大教授「責任法の多元的構造―不作為不法行為・危険責任をめぐって―」(2006年。以下、橋本論文という)である。
4、不作為不法行為の作為義務発生の根拠
(1)、作為義務発生の形式的根拠(法源)
通常、不作為不法行為の作為義務発生の根拠として、法令、契約、条理慣習が挙げられる。しかし、これらはいわゆる形式的根拠(法源)であって、これだけでは、具体的な事例において、果して作為義務が発生するのか否かの判断を導き出すことはできない。そのためには、さらに、作為義務発生の実質的根拠を明らかにする必要がある。以下、これについて検討する。
(2)、作為義務発生の実質的根拠
作為義務発生の実質的根拠について、橋本論文によれば、基本的な出発点として《何らかの原因から法益侵害に向かう因果系列の関する作為義務の負担・ひいては不作為責任にリスクは、当該因果系列と不作為者との関係、すなわち両者の「近さ」の観点から割り当てるべきもの[4]》(橋本論文28頁)と考えることができる。
そこで次に、この「近さ」を類型化する必要があるが、この点、ドイツの学説で検討されている不作為不法行為の類型化を参考にすれば、次のように、《この「近さ」の判断に関しては、(ⅰ)支配領域、(ⅱ)先行行為の観点を基準とすべきであろう》(橋本論文28頁)。すわなち、
①.支配領域の基準
支配領域の基準とは、何らかの原因から法益侵害に向かう因果系列が存在する場合、当該法益が事実上、特定の者の支配領域内に存するときには、当該因果系列に介入すべき作為義務をこの者に割り当てるというものである。例えば、保育所で保育中の乳児が体調不良を起した時、保育所の保育士等の監護者は、自己の支配領域内に存する乳児の身体の侵害に関して、必要な救護・救助措置を講じてこれを阻止する作為義務が発生する。或いは、夏山合宿に参加中の高校生の山岳部員が体調不良を起した時、引率した教諭ら管理者は、自己の支配領域内に存する生徒の身体の侵害に関して、必要な救護・救助措置を講じてこれを阻止する作為義務が発生する。
この場合、生命・身体など他人の法益を自己の事実上の支配領域内に有する者(以下、領域主体という)は、一方で当該支配領域に関して第三者による干渉を排除していて、第三者が当該支配領域に入り込んで当該法益の侵害を阻止することは不可能であり、他方で、当該支配領域にあるため、当該法益の主体自身(以下、法益主体という)によって当該法益の侵害を阻止することも制約されているから、それゆえ、領域主体は、おのれの支配地域内の他人の法益を、第三者や法益主体に代わってその安全を確保するように要請される、すなわち他人の法益が侵害されないように、自己の事実的支配を行使して当該法益を侵害から保護すべき作為義務を負うからである。
②.先行行為の基準
先行行為の基準とは、特定の者が自らの行為(先行行為)によって直接に当該行為から法益侵害に向かう因果系列を設定したときには、後の段階で当該因果系列に介入すべき作為義務をこの者に割り当てるというものである。例えば、それ自体として危険な物・場所が原因となって他者の身体を侵害する危険性のある事故が発生した場合、当該物・場所の管理者は必要な管理措置(とりわけ監視・隔離措置)を講じて身体への侵害を阻止する作為義務が発生する。
この場合、先行行為者は、いわば自己の先行行為に対する責任として、自己の先行行為から他人の法益の侵害に向かう因果系列について、他人の法益の安全のための作為義務を負わねばならないからである。
この先行行為の基準が実際上意味を持つのは、先行行為それ自体について作為不法行為責任を肯定することができない場合(つまり行為義務違反または有責性を欠く場合)であっても作為義務として取り上げることができる点にある。
(3)、本件への適用
本件において、県民健康調査の甲状腺検査(以下、本甲状腺検査という)の対象は原発事故当時福島県内に住む約38万人の18歳以下の子ども全員(以下、本件子どもらという)であり、チェルノブイリ原発事故の教訓に基づき、放射能に対する感受性が高い彼らは低線量被ばくによる健康被害の危険性が最も高いとして甲状腺検査の対象とされたものである。
①.支配領域の基準
本件子どもらを対象とした本甲状腺検査は、甲状腺癌の症例数など低線量被ばくの健康への影響の有無を判断する上できわめて重要な情報(以下、本情報という)を提供するものである。本情報は本甲状腺検査を主催する被告福島県が保有しており被告福島県の支配領域内にあるため、第三者の国、他の自治体、民間の医療機関が被告福島県に代わって、本情報を提供し放射能から本件子どもらの健康を守ることは不可能である[5]。言うまでもなく、本件子どもらとその保護者も自ら、本情報を取得し放射能から本件子どもらの健康を守ることは不可能である。従って、第三者や法益主体である本件子どもらに代わって本件子どもらの健康を確保するように要請されるのは被告福島県であり、すなわち被告福島県は放射能により本件子どもらの健康が侵害されないように、自己の事実的支配を行使して甲状腺癌の症例数などの本情報を本件子どもらと保護者に提供すべき作為義務を負う。その際、本情報提供にあたって、「二次検査では経過観察となり、診療中で甲状腺がんが診断された」場合の症例数を除外することを正当化するに足りるだけの合理的な理由は存在しない。
②.先行行為の基準
本来、県民健康調査を行なう第一の責任は国にある。なぜなら、国は原子力発電所建設を国策として率先して推進してきた者である以上、福島原発事故の発生に対して被災地住民の保護を引き受ける責任があり、それゆえ、国はこの自己の先行行為に対する責任として、被災地の住民の健康被害に対しても《原因の明らかでない公衆衛生上重大な危害が生じ、又は生じるおそれがある緊急の事態への対処に関すること》(厚生労働省設置法4条1項4号)を所掌事務とする厚生労働省が実施主体となって県民健康調査を行なうという作為義務があるのは当然であり、さらに、県民健康調査の中で判明した本情報を本件子どもらと保護者に提供すべき作為義務を負うのも当然である。
それゆえ、現在、被告福島県が実施中の県民健康調査は、福島県内で発生した原発事故に対して「住民の福祉の増進を図る」(地方自治法1条の2第1項)ことを存立の基本とし、なおかつ福島第一原子力発電所の建設に同意した福島県がその責任を果すために実施しているものであるが、同時に、県民健康調査は、上記の通り、先行行為に基づき県民健康調査を行なう作為義務を負う国からの委託に基づいて被告福島県により実施されているものである。
そうだとすれば、被告福島県は、県民健康調査の中で判明した甲状腺癌の症例数などの本情報を本件子どもらと保護者に提供すべき作為義務を負う国からの委託に基づいて、本情報を提供すべき作為義務を果す必要がある。この場合でも、本情報提供にあたって、「二次検査では経過観察となり、診療中で甲状腺がんが診断された」場合の症例数を除外することを正当化するに足りるだけの合理的な理由は存在しないのは言うまでもない。
5、本件子どもらの知る権利に対応した国らの情報提供義務
以上が、橋本論文を手引きとした本件における作為義務発生の根拠の検討であるが、なお重要な問題が抜けている。それは、本件子どもらに保障された「知る権利」の実現である。言うまでもなく、本件子どもらは己の生命、身体を侵害されないという人格権を有するばかりか、福島原発事故の発生に対して、己の生命、身体が侵害されないように、侵害防止に必要な情報を原発事故発生をもたらした者たち(東京電力株式会社、国、福島県など)に対し提供を求める権利、すなわち知る権利を有している。そもそも本件子どもらは福島第一原子力発電所の建設に対して法律的にも、また(成人の福島県民と異なり)道義的にも一点の責任もない。彼らは百%いわれのない理由で原発事故による健康被害の危険性という不安の中に陥れられたのであり、彼らを放射能による健康被害から救済するために必要なあらゆる情報を彼らに提供することは、無条件に、本件子どもらに保障された「知る権利」であり、情報を保有する国、福島県らに課された無条件の義務である。
6、小括
以上の通り、本件では、作為義務を実質的に根拠付ける「支配領域の基準」によっても、また「先行行為の基準」によっても、被告福島県が県民健康調査の中で判明した甲状腺癌の症例数などの本情報を本件子どもらと保護者に提供すべき作為義務を負うことは明らかであり、その際、「二次検査では経過観察となり、診療中で甲状腺がんが診断された」場合の症例数を除外することを正当化するに足りるだけの合理的な理由は存在しないことも明らかである。
そうだとすれば、被告福島県が甲状腺癌の症例数などの本情報を提供するという作為義務を負う以上、その前提として、被告福島県に、「経過観察」中に「悪性ないし悪性疑い」が発見された症例数を把握する義務があることは明らかである。尤も、前記第1で明らかにした通り、現状では、被告福島県は4年前から本症例データベースを構築しており、前記症例数も本症例データベースに登録済みであり、前記症例数を把握するという義務はしっかり履行している。被告福島が履行していないのは、把握しているにも関わらず前記症例数を本件子どもらに提供することである。
第3、求釈明
以上を踏まえて、改めて、被告福島県に対し、次の事実について明らかにするよう求める。
①.直近の時点で、「経過観察」中に「悪性ないし悪性疑い」が発見された症例の総数。
②.本研究計画書(甲C73の2)5頁「8 対象者の選定」の「協力施設」及び「協力病院」について
(1).協力施設の全ての名称
(2)、直近の時点で、協力施設から連絡のあった手術適応となる18歳以下の
②.本研究計画書(甲C73の2)5頁「8 対象者の選定」の「協力施設」及び「協力病院」について
(1).協力施設の全ての名称
(2)、直近の時点で、協力施設から連絡のあった手術適応となる18歳以下の
甲状腺癌患者の各協力施設ごとの総数。
(3)、別個に追加した協力病院の全ての名称
(4)、直近の時点で、協力病院から連絡のあった手術適応となる18歳以下の
甲状腺癌患者の各協力病院ごとの総数。
(3)、別個に追加した協力病院の全ての名称
(4)、直近の時点で、協力病院から連絡のあった手術適応となる18歳以下の
甲状腺癌患者の各協力病院ごとの総数。
③.本研究計画書2頁「4 データベースへの登録の必要性」で、「不要」を選択した理由。
以 上
[3] ウクライナではウクライナ国立記録センターで、チェルノブイリ事故被災者236万人のデータがデータベースに登録され、一元的に管理されている。その様子は2013年9月23日放送のNHK・ETV特集「シリーズ チェルノブイリ原発事故・汚染地帯からの報告「第2回ウクライナは訴える」で紹介された。
[4] この「近さ」に着眼する見解は、1980年代から刑法学で有力に主張されてきたものである。その例として、西田典之「不作為犯論」(1988年)、佐伯仁志「保障人的地位の発生根拠について」(1996年)。
[5] 実際上、2012年1月16日、当時、「県民健康管理調査」検討委員会座長の山下俊一福島県立医大副学長と鈴木眞一福島県立医大教授は、日本甲状腺学会会員宛に、本甲状腺検査を受けた福島県の子どもたちのうち5mm以下の結節や20mm以下ののう胞が見っかった者の親子たちが、セカンドオピニオンを求めに来ても応じないように求める文書(甲C76)を出し、福島県による排他的、一元的な甲状腺検査体制の確立を図った。
◆被告福島県の準備書面(11)の3頁